「海外で働く」という夢のかなえ方 ー ロンドン駐在・高家菜々子氏が語る挑戦の意味

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はじめに

グローバル化が進む現代社会では、留学や海外勤務を志す人も少なくありません。しかし、円安や経済的な理由もあり、実際に海外で働くことは容易ではないと感じる方もいるのではないでしょうか。

本インタビューでは、日系大手消費財メーカーに在籍し、現在イギリス・ロンドンに駐在中の高家菜々子氏にお話を伺いました。高家氏は日本での4年間の勤務を経て、2025年3月からロンドンオフィスに異動。ヨーロッパリージョンチームに所属し、ブランド戦略やマーケティング施策の立案に携わっています。多国籍チームの中で唯一の日本人として、日本とヨーロッパの架け橋となる役割も担っています。

就職活動の段階から「海外で働きたい」という明確なビジョンを持ち、それを実現させた高家氏の経験は、これからグローバルに活躍したいと願う若者にとって貴重な指針となるでしょう。ロンドン生活で得た気づきや異文化環境での仕事の進め方、そして困難な道でも挑戦し続けることの意味について語っていただきました。

「海外で働く」という夢の始まり ー 就職活動から駐在実現まで

ーー 現在ロンドンで働いていらっしゃいますが、そこに至るまでの経緯についてお聞かせください

日本で4年間勤務した後、2025年3月から会社のUKオフィスに異動となり、2027年1月までロンドンで勤務する予定です。就職活動のころから「消費財のマーケティングに携わりたい」「いつか海外で働いてみたい」と思っていて、少しずつその目標に向けて準備してきました。

ーー 海外で働きたいという思いは、いつ頃から芽生えたのでしょうか

大学入学前から、海外で働くことへの憧れがありました。旅行で知らない土地に行くと、周りにいる人の価値観も文化も違っていて、そんな環境に純粋な楽しさを感じていました。人生の多くの時間を費やす仕事だからこそ、少しでもワクワクできる環境に身を置きたい。その「ワクワクする環境」が自分にとっては、「インターナショナルな環境で働くこと」でした。漠然とした憧れが、就職活動を通じて明確な意思へと変化しました。

ーー その目標を実現するために、就職活動ではどのような選択をされたのでしょうか

「インターナショナルな環境」で働きたいと言っても、実際にはさまざまな働き方があります。日本にいながら多国籍チームで働く方法もあれば、実際に海外に住んで働く方法もあります。就職活動を通して自身と向き合うなかで、私は「現地に身を置いて働く」ほうを選びたいと思いました。また、消費財という業界にも興味があり、日本発で海外に展開している企業なら、将来的に海外勤務のチャンスを得やすいのではと考えて選びました。

ロンドン駐在の日々 ー 充実と困難

ーー 念願の海外駐在が実現し、日本で働いていた頃と比べてどのような変化がありましたか

日本では、マーケティング部署で国内市場を担当していました。日本市場や商習慣を深く知る良い機会でしたが、海外の方々と英語で仕事をする機会は限られていました。ロンドンに来てからは、ヨーロッパ市場全体を担当するチームに所属し、より高い視座でブランドの中長期戦略やポジショニングを考えるようになりました。上司やチームメンバーとともにストーリーをつくりあげる大きな仕事に携われるようになり、日々新しい発見があり充実しています。

ーー 充実した日々を送られているようですが、海外で働くうえでのご苦労についてもお聞かせいただけますか

やりがいと困難は切り離せないものだと感じます。今のチームには日本人が私ひとりで、上司もスウェーデン、香港、ロシアなど出身国がバラバラです。言語は通じても、仕事の進め方や伝え方は日本とは少し異なると感じることがあります。駐在当初は、自分がうまく適応できるのか不安になることもあって、「どうすればこの環境で貢献できるのだろう」と悩む日もありました。

多様なチームでの仕事術 ー「聞く」姿勢の重要性

ーー 多様なバックグラウンドを持つ方々と円滑に仕事を進めるために、どのようなことを大切にされていますか

私は「話すより聞く」ことを大切にしています。こちらでは自分の意見を積極的に述べる人が多い印象ですが、私は相手がどう考えているかをまず聞く姿勢を重視しています。ただし、「あなたはどう思う?」と聞かれることも多いので、自分の意見を言えるように何かしらの考えを持っておくことは大切です。知識不足などで大した意見は言えないなと感じる状況であっても、「自分なりの考え」を持ち、そのうえで、まず相手の意見を聞いてみようという姿勢は重要なのかなと思います。

ーー 「聞く」ということは実践が難しいようにも思いますが、実際に取り組まれていかがでしょうか

本当に難しいです。私自身もまだまだできていないのですが、個人的な意見として、一歩引いてまず相手にファーストアクションを取ってもらい、そこから自身の意見も発信しながらディスカッションを積み上げていくというやり方は、特にインターナショナルな環境で仕事のコミュニケーションを進めるための効果的な方法の一つかなと実感しています。

成長し続けるために ー 疑問を持ち、初心を忘れない

ーー 新卒1年目など実務経験がまだ浅い方が多様なバックグラウンドのチームで仕事をする場合、どのようなことを意識するとよいでしょうか

これも難しいですね。自分が1年目だった頃を思い返すと、本当に何も分かっていなかったなと感じます。ただ、知識や経験が足りないときこそ、素直に吸収しようという姿勢がすごく助けになりました。いきなり完璧な答えを出すのは難しいですし、そもそもそれがその状況において求められているかも分かりません。私が1年目の時に実践したのは、会社のやり方や決まりに疑問を持ってみるということでした。当時の私から見て、伝統的な社内ルールが多く、仕事のやり方も複雑な部分はあるように感じ、「なぜこの方法なのか」「本当に必要なのか」とあえて疑問を持って仕事するようにしていました。新卒の社員として、お客様に近い感覚を持っているのではと思い、その視点を強みと考えて取り組んでいました。

ーー 今でもその「疑問を持つ姿勢」を大切にされているのでしょうか

入社して数年経ち、1年目の時ほどできていないかもしれませんが、疑問を持つ姿勢は大事にしています。最近、日本から来た経営層の方に「外の視点からの気づきが会社にとってすごく価値がある」と言われたことがあり、初心に近い気持ちを思い出しました。現在の立場から日本の本社の様子を見て、「さらに良くなる可能性があるのでは?」と思う場面があります。そうした「気づき」は携帯のメモに書き留め、帰国した際の報告内容として整理しています。新しい環境に入った時の最初の気づきを逃すと分からなくなってしまうので、そうした発見を記録する習慣を大切にしています。

ーー 忙しい日々のなかでも、初心に立ち返ることを大切にされているのでしょうか

初心に帰ることは大切だと思います。私は、社会人になる前に、誰にも見せない秘密のスライドを作り、5年後、10年後、20年後の自分がどうなっていたいかを書いていました。例えば20代は海外で働きたい、30代はその経験を生かして日本に戻りたい、40代はリーダーシップを発揮するポジションに就きたい、などです。そうしたスライドを読み返すことで、純粋に何をやりたかったのか、社会人として何を成し遂げたいと思っていたのかを思い出せて、原点に戻る良いきっかけになっています。

挑戦の原点 ー 新しい世界を見続けたい

ーー 困難な道を選び続ける、その原点についてお聞かせください

なぜ困難な道を選ぶのか…私は小さい頃から「迷ったら、少し大変でもやってみたいと思うほうを選んでみたら?」と教えられ育ちました。困難な方を選ぶ理由は、「その挑戦を乗り越えた先に新しい世界や景色が広がっている」と感じているからです。変わらない環境にいるより、ワクワクできるものに出会いたいし、そういう環境に身を置きたい、という気持ちがあります。周囲にも向上心のある友人が多く、その姿からも励まされています。「新しいものを見続けたい」という思いが、私にとって挑戦の原動力なのかもしれません。

忙しい日々のなかでは、新しいことを学ぶのが大変に感じるときもあります。でも、仕事をしている以上、何らかの形で社会に貢献したいという気持ちはずっとあります。私の場合は、商品を通じて誰かの生活が少しでも良くなることが嬉しくて、その一部になれたらと思っています。そのためにも、自分自身が価値を提供し続けられるように、学び続けることや新しいことに挑戦する姿勢を大切にしたいです。


※内容や肩書は2026年2月の記事公開当時のものです。

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