「常に道を模索し続ける」 ー グローバル社会で自分らしいキャリアを切り拓く

学び続ける

はじめに

本インタビューでは、幼少期から自立心を育み、海外経験を積極的に求めてこられた佐々木陽菜氏のキャリアパスに焦点を当てます。埼玉県出身の佐々木氏は、中学・高校と自分の意思で進路を選択し、高校1年次にはオーストラリアへ、大学4年次にはアメリカへ交換留学を経験されました。大学卒業後は総合商社に入社し、一貫してエネルギー分野の業務に従事。入社2年目からシンガポールにおけるトレーニー経験を積み、その後オーストラリアに3年弱駐在されました。さらに社会人としてイギリスの大学院で1年間学び、エネルギー分野の専門性を深められた佐々木氏は、現在、仕事を通じて特に世界のエネルギー課題解決に貢献することを目指しています。佐々木氏の経験から、「学ぶこと」の本質的な意義と、自分らしいキャリア構築のヒントを探ります。

自立心の芽生え ー 幼少期の選択と学び

ーー まずはご自身の生い立ちについて、自己紹介を含めてお聞かせいただけますでしょうか

私は埼玉県出身で、小学校は公立の学校に通っていました。通っていた小学校では中学受験をする同級生は数人しかいませんでしたが、そのうちの1人が受験の勉強を始め、その子の話を聞いて、自分もやってみようと思いました。小学校3、4年生くらいの時に自分から塾に行きたいと親に言ったのを今でもよく覚えています。

思い返せば、一貫して、親から「こうしなさい」と言われたことはあまりなくて、自分で必要だと思ったことや挑戦したいと思ったことをやってきました。その第一歩が、小学生の時の塾選びだったと思います。

塾に通っている間も、親からは宿題をやりなさいなどとはあまり言われませんでした。トップの難関校を目指すというよりは、学ぶことを楽しみながら受験もやっていこうという感じでした。受験する中学校も、小学生の頃から海外留学がしたいなと漠然と思っていたので、留学制度が充実しているかなど自分でいろいろ情報を調べて、親と相談しながら決めました。

異文化との出会い ー 高校時代のオーストラリア留学

ーー 実際に海外留学は実現されたのでしょうか

高校1年生の時に、1年間オーストラリアの学校に行くことができました。現地のホストファミリーにお世話になって、2〜3ヶ月ごとに滞在先を転々としました。郊外の公立の学校で、生徒は現地の方々がほとんどで日本人は私以外に見かけない環境でした。

ーー オーストラリア留学中の生活で、特に印象に残っていることについてお聞かせください

日本の学校に通っていた時とは全く違う時間の使い方をしていたことでしょうか。とにかく勉強という雰囲気ではなく、時間がゆっくりと流れるような感覚でした。学校から帰ってきて勉強していると、ホストファミリーから「勉強もいいけれど、もっと私たちと一緒にゆっくり過ごしましょうよ」と言われるような感じでした。

留学して最初の頃は、日本での大学受験のことを考えて不安に思うこともありましたが、1年間という限られた期間だったので、現地流の生活をした方がいいと思うようになり、途中からは現地の人たちと過ごす時間がより増えました。

課外活動もいろいろやってみました。特に印象に残っているのは、先住民族のダンス「アボリジナルダンス」に取り組んだことです。これは私にとってすごく貴重な経験でした。ほぼ先住民族の方々しかいないグループに入れてもらい、小学校や幼稚園に行ってダンスのパフォーマンスを披露する活動なども一緒にさせてもらいました。

ーー 留学生活のご経験は、その後の進路を考える上でどのような影響を与えたとお感じですか

実際に留学したことで、外の刺激を受けて学ぶという感覚がすごく楽しく、自分の知らない世界に行くとやはりわくわくする気持ちになると実感しました。そして、留学はそういったいろいろな経験を積むことに適した手段だと再認識しました。

また、将来どういう仕事をしたいかを考えたとき、世界規模の課題を解決できる、あるいは解決に貢献できるような仕事をしたいと思うようになりました。国際的に活躍するためには高度な英語力も必要だし、いろいろな国籍の人たちがいる中で活躍できる人材にならなければいけないと思っていたので、留学はその手段として自然な選択だったように感じます。

キャリアビジョンの形成 ー 国際的活躍への志向

ーー 国際的に活躍したいというお気持ちは、いつ頃から芽生えていたのでしょうか

親が海外に関わる仕事をしていたこともあり、小学生の頃から日本の外に世界があるという認識がありました。違う文化の人たちと関われる仕事がしたいと漠然と思っていました。

その思いが明確な方向性を持ったのが、高校時代のオーストラリア留学です。現地で、白人社会と先住民族の間に存在する分断や格差といった、リアルな社会問題を目の当たりにしました。この経験を通じ、ただ異文化に関わるだけではなく、そういった世界の課題解決に貢献できる仕事をしたいと思うようになりました。

当時は仕事の選択肢についてあまり知らなかったので、国連のような組織で働くことをイメージし、そのための学びを得ようと大学では法学部政治学科に進むことにしました。

ーー 大学ではどのような活動に取り組まれていましたか

大学でも海外留学に行きたいという気持ちがあり、入学後は交換留学の出願を検討していました。一方で、自分が好きなことを集中的にやりたい、課外活動も大学で真剣にやりたい、とも思っていました。

その中で、競技チアリーディングの活動に1年生から3年生まで取り組み、それに集中してから留学に行こうと決めました。4年生の時に、派遣交換留学制度でカリフォルニアに留学することになりました。

勉強に加えて、部活などさまざまな活動に時間を充てた大学生活でした。

ーー 就職活動はどのように進められたのでしょうか

大学での留学前後に就活をする中で、日本の企業に行きたいと思うようになりました。留学を通して、日本は技術面を含め多くの魅力を持っており、世界から評価されている国だと再認識したからです。日本人として、日本の魅力を世界に届けつつ、海外との関わりを持ちながら課題の解決に寄与したいと思いました。

就職活動を始めた頃は、メーカーなどのわかりやすい商材があって海外展開している企業を見ていました。しかし、留学を経て、入社後早い段階から海外で即戦力として働ける可能性を重要視するようになり、総合商社で働くことに興味を持つようになりました。実際、入社数年目で海外赴任している方々もたくさんいると知ってからは、自然と商社の志望度が高まりました。

グローバルキャリアの実践 ー 総合商社での挑戦

ーー 商社に入社されて、ご自身のやりたいことや目指す方向性は実現できているとお感じですか

私自身は世界規模の課題に立ち向かいたいという思いがあり、だからこそ商社を就職先として選択しました。就職活動時は、仕事を通じて大きなインパクトを創出できたらと考えていました。そのため、エネルギーや金属など、生活に必須の物資で、世界中でトレーディングや投資がされているものに興味がありました。

就職して配属されたのは、液化天然ガス(LNG)を扱う部門で、希望していたエネルギー業界に携わることができ感謝しています。また、入社して2年目の終わり頃からシンガポールにトレーニーとして約1年間派遣され、その後日本に半年ほど戻ってから、オーストラリアに3年弱駐在しました。早くから海外に行って仕事の経験を積みたいという目的が達成できました。

ーー ご自身のご経験から、海外で働く上でどのようなマインドセットが必要だと思われますか

私は留学経験はありつつも、海外で生活する中で自分自身のことを積極的にアピールするのが未だに得意ではありません。もちろん、いろいろな経験を積んで自信をつけてきた部分はありますが、根本的に自分に強い自信があるわけではないと感じます。

欧米のワーキングスタイルでは、自分で自身の成果をアピールしていくことが重要だと思います。自分は何ができるのか、何をやりたいのか、どんなパフォーマンスをしたのかを、チームメンバーや上司にしっかりとアピールする必要があります。仕事を獲得するためにも、自己アピールが大切です。

これは私にとっては自然体ではなく、意識しないとできない部分で、海外勤務を経験した今でもハードルを感じています。そこで、いろいろな人にアドバイスをいただきながら、自分らしさを失わないようにしつつ、必要なアピールはするように心がけています。

これは海外での勤務を経て得た学びの一例で、社会に揉まれながら継続的に努力していることでもあります。

継続的な学びと未来への展望

ーー 今後のキャリアについて、どのようにお考えでしょうか

これまでのキャリアと通じる専門性と業界を俯瞰する広い視野を身につけたいという思いがあり、キャリアの途中で大学院に行くことを決断しました。オーストラリア駐在から帰任後、ロンドンの大学院に1年間留学し、先日卒業して帰国しました。

今後のキャリアステップとしては、エネルギー業界でのプロフェッショナルとしての経験を生かしていきたいと思っています。エネルギーは世界中どの国でも欠かせないものであり、大きな課題も存在します。私が特に重視する課題として、まだ全世界にエネルギーが行き渡っていないこと、地球温暖化対策としてエネルギーをどう脱炭素化していくか、の二つがあります。エネルギーを拡張していくためには安価なエネルギー源が必要ですが、それは往々にして化石燃料になります。この二つの課題を両立させることは難しいですが、仕事を通じて取り組んでいきたいと考えています。

ーー 最後に、学ぶことの意義について、どのようにお考えかお聞かせいただけますでしょうか

人生すべてが学ぶということだと思っています。学びにつながらないことはないと思います。AI技術が進化する現代においては、学ぶか学ばないかではなく、「どう学ぶか」を考えていくことが大切だと感じます。

常に模索していくことが大事で、状況は時々に応じて変わっていくものです。「こうでなければならない」という道は正直ないと思っています。私の中では、一つ一つのステップを歩んでいく過程に楽しさや面白さを見出すことが大切で、ゴールがすべてではありません。私自身はプロセスを大事にしているので、人生を通してそういう姿勢でやってきたし、これからも道を模索し続けていくのではないかと思います。


※内容や肩書は2025年10月の記事公開当時のものです。

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