総合診療医として幅広い現場に携わる古田京氏。慶應義塾大学医学部で学びながら體育會蹴球部主将を務めた経験は、知識を深めるだけでなく、人との関わりの中で学びを育てていく姿勢にもつながっていきました。在宅医療から地域の中核病院まで、医療の現場で向き合ってきた多様な出来事は、学びが日々の経験の積み重ねの中で形づくられていくことを実感させるものでもあります。目の前の人に向き合いながら、自分の中に芽生える問いを大切にしてきた古田氏が、これまでの歩みを通して見えてきた“学びのかたち”を語ります。
古田京といいます。総合診療という専門を持って医師をしています。総合診療医というのは、いわゆる「なんでもみる医者」であり、もう少し言葉を補うと、かかりつけ医として患者さんの人生の中で生じる医療の問題をさまざまな手段を使って解決していく仕事です。いくつかの経験を経て、将来は街中にある中小病院の経営をしたいと考えています。
僕は学生時代、慶應義塾大学医学部での勉強と体育会のラグビー部での活動を両立していました。ただ振り返ってみると、何か特別なことをしたというよりは、どちらも好きだったから続けられた、というのが正直なところです。勉強もラグビーも、それなりに大変ではありましたが、「やりたいからやる」という感覚があったからこそ、自然と時間を使い、その結果として一定の成果につながったのだと思います。
この経験から考えると、「どう学ぶか」「なぜ学ぶか」という問いに対しては、その人が好きで、得意で、さらに社会から求められていることに出会えれば、自然と学び続けることができるのではないかと思います。学び方そのものは一つではなく、その人に合った方法でよいのではないでしょうか。
もちろん、その過程では苦手なことや気の進まないことにも向き合う必要が出てきます。ただ、やりたいことが定まっていれば、それらにもある程度取り組めるようになるはずです。僕自身も、現役時代に苦手だったウエイトトレーニングに取り組めたのは、「ラグビーが好き」という前提があったからでした。やはり重要なのは、自分が心から取り組みたいと思えるものを持っているかどうかだと思います。
一方で、それが見つからないまま、苦手なことや嫌なことだけに向き合い続けるのは、なかなか難しいことでもあります。特に現代のように選択肢が多い社会では、無理に一つの型にはめるよりも、自分の内側から湧いてくる興味や関心を大切にした方が、結果として持続的な学びにつながるのではないかと感じています。
また、人との関わりの中でどのように生きるかも、とても重要なテーマだと考えています。単に一緒に時間を過ごすだけでなく、一人ひとりと向き合い、相手のことを知り、考え、感じ、認める。そのような関係の中でこそ、人はより豊かに生きられるのではないでしょうか。そして、そのような関係を築くためにも、最低限の知識や教養、すなわち「学び」は必要になるのだと思います。
僕が将来やりたいと考えている病院経営も、こうした考えとつながっています。医療は単に病気を治すだけでなく、その人の人生を支える営みでもあります。在宅医療を中心とした「治し支える医療」は、人と人との分断を少しずつ和らげ、その人がその人らしく生きることのできる社会につながると信じています。
どこで死にたいか、どう死にたいか、あるいはどうしないと死ねないか。患者さんとそれを取り囲む人々にとっての正解のない問いに向き合い続けることが、僕の医師としてのやりがいであり、この分野の魅力だと感じています。
そして、この「治し支える医療」において最も重要なのは、「自己を尊重し、他者を尊重する」という姿勢だと思います。日々、さまざまな人生や看取りに関わる中で、その姿勢を自然と学ばせてもらっている感覚があります。その延長線上に、人が人を想うということ、そして「愛」と呼ばれるものがあるのではないかとも感じています。
この姿勢は医療にとどまらず、今の社会においても必要なものだと思っています。医療者に限らず、この分野に関わる仲間を増やしていくこと。そして、その広がりが結果として、それぞれがその人らしく生きられる社会につながっていく。そのようなことを実現したいという思いも、僕が病院経営を志す大きな理由の一つです。
今の自分にとって、好きで、得意で、社会から求められていることは、この病院経営なのだと思っています。だからこそ、読書をしたり、AIと一緒に考えたり、さまざまな人に会ったりしながら、自然と学び続けているのだと感じています。
学び方に明確な正解はないのだと思います。ただ、自分が何に惹かれ、何に意味を感じるのかに丁寧に向き合うこと。それが結果として、その人らしい学びと生き方につながっていくのではないでしょうか。
古田京
総合診療医。慶應義塾大学医学部卒業、體育會蹴球部主将を務める。済生会宇都宮病院で初期研修を修了後、おうちにかえろう。病院、やまと診療所、飯塚病院、頴田病院、都立広尾病院にて総合診療を学ぶ。現在は医療法人杏生会に所属し、在宅医療を中心に「治し支える医療」の実践に取り組んでいる。
※内容や肩書は2026年4月の記事公開当時のものです。

